こんにちは!ドライブレコーダー専門家で「車とカー用品の研究室 LaBoon!!」編集長の鈴木朝臣です。
最近は煽り運転被害などの走行中のドラレコ映像だけでなく、当て逃げ被害などの駐車中のドラレコの証拠能力がクローズアップされるようなニュースも増えていますね。
このようなニュースを目にして、ドラレコによる駐車監視を検討されているユーザーも多い様ですが、実は駐車監視の運用は意外とハードルが高いものである事をご存じでしょうか?
例えば「週末のお出かけの時だけ、外出先で短時間の駐車監視を行う」と言った運用方法であればそれほどハードルは高くはないのですが、自宅や会社の駐車場でも駐車監視を運用したいとなると、様々な問題が発生して途端にハードルが高くなります。
何故なら、駐車監視は車のバッテリーの電力を使用する為、長時間の駐車監視はバッテリーの寿命を大幅に縮める可能性があるからです。
このような理由から、私は安易に駐車監視の導入をおすすめはしていません。
しかしなかがら、過去に当て逃げの被害に遭ったなどの経験があるなど、それでも長時間の駐車監視をしたい事情がある方向けに、この記事では長時間の駐車監視の障害となる問題と、その解決方法についてご紹介します。
長時間の駐車監視の障害となる問題
最近のドライブレコーダーには駐車監視機能を搭載している製品が主流となっていますが、12時間以上の長時間の駐車監視を行う場合には以下の2点が障害となります。
車のバッテリーで何時間ドラレコが駆動する?
まずは一つ目のバッテリーの問題から解説しますが、車のバッテリーで何時間の駐車監視が出来るかは一概には言えません。
何故なら、これはドライブレコーダーの消費電力、バッテリーの最大容量や充電状況、劣化具合などによって大きく変動するからです。
バッテリーの容量
バッテリーの容量は、純正品でも車種によって大きく異なりますが、例えばトヨタプリウス50系の場合には、電装品に電流を供給する補器バッテリーは以下の物が推奨されています。
※純正品のスペックは未確認ですが「BOSH」では以下が対応品
この「SLK-5K」というバッテリーの給電能力がどれくらいなのかというと、20時間で54,000mAh(12V)の電流が供給できる程度です。
おそらく普通の人はこの数値を見ても何が何だかサッパリ分からないと思いますので、簡単に数字の見方を説明しますが、上の表の見出しの「品番」の隣に「20時間率容量」と書いてありますよね。
「20時間率容量」とは
ここで記載されている見慣れない「20時間率容量」の項目の「54Ah」の表記は、バッテリーの容量の大きさを表現しています。
具体的には、20時間で容量を空にする程度の電流の大きさで放電し続けた場合には、「54Ahの電流が流せます」という意味です。
「Ah」とは蓄電量を表す単位で、1Aを1時間流し続けると1Ahとなります。
従って54Ahと記載されている場合には12V/2.7Aの電流を20時間流し続けると、54Ah分の電流が供給されてバッテリーが使用不能になります、という事になります。
Ahの表記は分かりにくいので、電力量を表すWhに直すと54Ah×12V=648Whになります。
1Whは1Wのガジェットを1時間動かせる電力量、ですので648Whのバッテリーであれば648時間の駆動が可能です。
ドラレコの消費電力
駐車監視の持続時間は、概ね車のバッテリーの残量とドラレコの駆動電力によって決まります。
そこで気になるのがドラレコの消費電力ですが、平均的な2カメラのドライブレコーダーの駐車監視中の消費電力は4W程度です。
従って4Wのドラレコで12時間の駐車監視を行うと、バッテリーが消費する電力量は48Whとなります。
さて、新品のバッテリーのバッテリーの648Whと言う容量から考えると、この48Whと言う数値はそれほど大きくないようにも思えます。
バッテリーが満タンの状態から48Whを消費しても、まだ600Whの余裕があります。
しかしながら、走行時間が短い車でほとんどバッテリーを充電せずに長時間の駐車監視を繰り返した場合、バッテリーの蓄電量が徐々に減少し、最後は駐車監視が出来ない状態に陥ります。
車の鉛バッテリーはそれほど充電効率が良くないので、1時間運転しても充電される電力量は20~30Wh程度になるでしょう。
日々の走行で充電される電力が、駐車監視で消費される電力を下回っていると、いずれバッテリーの蓄電量が極端に減ってしまいます。
バッテリーの容量や性能にもよりますが、空に近い状態までバッテリーを使い切ってしまった時には、15~20時間くらい車を走らせないと満充電にはならない事もあります。
また、車には暗電流と呼ばれるコンピューター類などの消費電力が0.5W程度はありますので、ドライブレコーダーの駐車監視をしていない状態でも、1日で12Wh程度の電力を消費します。
従って2カメラのドラレコで1日12時間の駐車監視を毎日継続するならば、2~3時間は走らないといずれバッテリーが尽きてしまう事になります。
なお、仮に2~3時間の走行時間を確保出来たとしても、バッテリーの寿命は放電回数・充電回数に比例して縮み易くなりますし、バッテリーが上り易くなったり半年~1年で使用不能になる事もあるそうです。
【検証】ドラレコの駐車監視でバッテリーの寿命はどれくらい縮むのか?
ドラレコへの給電時間の問題を解決する方法
車のバッテリーを傷めずに最も簡単にコストを掛けず、長時間の駐車監視を行う方法としては、大容量のモバイルバッテリーの使用が挙げられます。
ただし、最近はモバイルバッテリーの普及率が上がり少ながらず発火・爆発事故が発生していますし、モバイルバッテリーは炎天下の車内などでの使用を想定して作られたものではないので、この方法はおすすめしません。
■ モバイルバッテリーから給電・充電出来るドライブレコーダー
因みに東京消防庁の報告によると平成23年から28年11月までの間にリチウム電池関連の火災が65件発生しており、モバイルバッテリーやスマホの普及に伴って件数は急上昇しています。
このうち、モバイルバッテリーが原因となるのが12件だそうです。
最近はドライブレコーダーの駐車監視用の専用バッテリーとして、以下のような製品も販売されていますので、安全面を重視する方はドラレコ専用品がおすすめです。
microSDカードの容量はどれくらい必要なのか?
前述の電源の問題を外部バッテリーなどを使用してクリア出来たとしても、次に問題として浮上してくるのがmicroSDカードの容量不足です。
フルハイビジョンクラスの1カメラドラレコであれば、走行時の録画モード1時間当たりのデータ使用量は6GB、2カメラであればその2倍の12GB程度になります。
例えばフルハイビジョンの2カメラドライブレコーダーで、128GBのmicroSDカードを使用した際の上書きされない動画保存時間は10時間弱です。
ただし、ドライブレコーダーの駐車監視の録画方式には、以下のいずれか、または複数の組み合わせが存在しますので、走行中と同じだけの容量を使用する訳ではありません。
流石に2カメラ以上のタイプでは、microSDカードの容量の問題から駐車監視を常時録画だけで行うモデルはほぼありませんので、現実的には衝撃検知・動体検知・タイムラプスのいずれか、または複数の組み合わせとなります。
従って長時間の駐車監視が可能な2カメラドラレコは、かなり選択肢の幅が広くなります。
主要メーカー2カメラドラレコの駐車監視の録画方式
主要メーカーの主力の2カメラモデルの駐車監視の録画方式は以下の通りとなっています。
コムテック
コムテックは日本ではトップシェアのドラレコメーカーですが、昔から駐車監視の利便性に特化した製品特徴となっています。
同社の主力製品の2カメラドラレコの「ZDR035」「ZDR045」「ZDR055」の駐車監視の録画方式はこちらの通りです。
これらの製品の駐車監視モードでは、最も証拠能力が高い「常時録画+衝撃検知」の方式がおすすめですが、このモードの録画仕様は以下の通りです。
駐車監視のタイマー設定では、バッテリーの電圧が一定値以下に下がるまでの時間無制限も選択可能ですし、非常に使い勝手の良い駐車監視のシステムとなってます。
ケンウッド
ケンウッドは特に駐車監視に特化したメーカーではありませんが、最近では業界全体の進歩に合わせて駐車監視機能の使い勝手に優れた製品も出て来ています。
2024年上半期の時点でドラレコとしての画質のクオリティも考慮した上で私が推奨している製品は、「DRV-MR570」になりますが、この製品の駐車監視の録画方式はこちらの通りです。
VANTRUE
VANTRUEは駐車監視に特化した3~4カメラのハイエンドドラレコを展開する中国メーカーですが、現時点では録画解像度や夜間画質の面から駐車監視目的では最もおすすめし易いメーカーです。
同社のドラレコの駐車監視の使用はほとんど共通しており、以下の録画方式となっています。
高解像度の3~4カメラの為に証拠能力は高いですが、消費電力もそれなりに大きくなるのが玉に瑕です。
まとめ
以上、ドラレコで長時間の駐車監視を行う方法と、長時間の駐車監視向けのドラレコをご紹介しました。
最近のドラレコは機能面で多様化しており、全てが理想的なモデルが少ないのですが、選択肢の幅は広いので、良く調べた上で目的に合わせたものを選ぶ事は可能だと思います。
2015年に趣味が高じて、車とカー用品の研究室 LaBoon!!の運営をはじめました。
現在では自分が使いたいガジェットの商品企画・開発・販売も手掛けています。
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